地球の三角、宇宙の四角。
30分ぐらいの【豊沼 秀虎理事長の軌跡】はそれなりに面白い内容だった。一代で108個もの救急病院を主に山奥や離島を中心に設立するに至る過程をスライドショーと抑揚のあるナレーションでドラマチックに演出されていた。終わると拍手が鳴り、会場の照明が一斉に点灯した。

おそらくここにいるほとんどの人は何回も見ているのだろうなんて事を思う。

壇上のスーツの男は車イスの老人に耳打ちをして、うなだれた老人はゆっくりと頷いた。

スーツの男は、うなだれたままの老人の胸の下あたりにマイクを向けた。

「キューーーーン」と、スピーカーからハウリングの音が聞こえて男は少しマイクを離す。

よく見ると老人の首の真ん中あたりからコードのような物が伸びており、老人の左手には小型のスピーカーメガホンのような物が握られていた。そこから電子音声のようなエフェクトをかけたざらついた老人の声で「おはようございます」と口を閉じたままで話し出した。


老人以外の全ての人間は一斉に90度のお辞儀をしたまま固まった。一斉に倒れるドミノのようだった。
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