地球の三角、宇宙の四角。
放心状態で自分の部屋へ戻るとベッドの上に女の子が腰を掛けていた。

この女の子は知っている。だけどいよいよどうにかなってしまっているのか、いつから知っててこの子が私にとって何なのかがよくわからない。これから知ることになるのか以前から知っているのかが把握できない。

「どうしたの? どうしてここにいるの?」

「どうして、ここにいるの」

抑揚のない生気の抜けたような声で女の子は返事をした。

「ここ、わたしのベッドなの」

「ここ、わたしのベッドなの」

同じ言葉を繰り返す。オウム返しのマキちゃんという松波さんの声が頭に響く、そのあとに【オウム返しのマキちゃん】と、同じ言葉を男の声が言った。

「あなたは、マキちゃん?」

「あなたは、マキちゃん?」

自分が聞いているのか自分が聞かれているのかがわからなくなる。わたしはマキちゃんなのだろうか?

「わたしは、マキちゃんじゃないよ」

「わたし、マキちゃん」

マキちゃんは自分がマキちゃんであることを認めた時点で、なんだか私がマキちゃんじゃなくなった。

マキちゃんをマキちゃんに取られたような気がしてなんだか寂しくなった。

「どうして、ここにいるの? 迷子?」

「どうして、ここにいるの? 迷子?」

さっきまでと同じ顔の冷たい目をしたマキちゃんの表情に物悲しさの色がついたように見える。さっきまでと同じ顔のわたしも迷子だからだ。

「もとのところに帰りたいね」

「もとのところ、かえりたい」

もとのところってなんだろう。もとのところってどこだろうか。マキちゃんは黙ったままだ。マキちゃんの頭をなでるとマキちゃんは目をつぶってうつむいた。

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