地球の三角、宇宙の四角。


かなくんの形をした黒い影は、ゆっくりとこっちに歩いてくる。

歩く一足ごとに足が細くなっていき、スラリと伸びる。

「なに、怒ってんだよ」

イケメン口調で、かなくんは私に言う。うつむくと自分の着ている病着の裾が見えた。

どれくらい病院にいたんだろうか。そして、いつの間に出たんだろうか? 外に出るのは、いつぶりなのか――

「はゆみ、とりあえずさ、服買いに行こうぜ。服」

手を繋がれて人の流れに逆らって進む。歩くたびに、薄い緑色の病着がひらひらと揺れた。

「かなくん!」

「何?」

「あの、はずかしくない?」

「何が?」

「何がって、わたしと歩いてて」

「ん? はずかしくないけど。なんで?」

「わたし、はずかしい」

握られた手に力が込められて、立ち止まった。

「よく考えたらさ、服屋なんかこの時間から開いてないよなー」

かなくんはキョロキョロと首を振る。

「かなくん」

「なに?」

「どこにも行きたくない」

「へ?」


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