地球の三角、宇宙の四角。
足先の冷たさが、胸へと吸い込まれていく。

熱が、鼓動ごとに足の裏からじんわりと入り込んでくる。

膝をついた状態の彼は、少しだけ前傾姿勢になって私の膝はTシャツの中で折れて曲がって、白いTシャツは膨らんでいった。

お風呂に入れた入浴剤のように、Tシャツの中で熱が、もわりと揺らめく。


「いつまでも、冷たいままだね」

なんと答えたらいいのかわからない。

「風呂に入る? ちゃんと温めた方がいいかもね」

頷いたけど、もう少しこのまま体温を感じていたかった。

足を胸に、押しつけられたまま、黒いジャケットを脱ぎ捨てたかなくんを見上げると、目が合った。

両手がふくらはぎから、膝の裏に伸びて、くすぐったくて身をよじると、足の裏がずれて足の指が胸の突起をかすめるように引っ掻いてしまった。

それに反応するように足を握られた指先に力が入って、砂埃にまみれた足の裏の砂を、顔になすりつけるようにして沢山のキスをあびた。はずかしくて足を動かすとかなくんは白いワイシャツにぶら下がるネクタイを外して、両膝を緩く縛り、白いシャツを脱いだ。

Tシャツも脱ぐとつつまれていた熱がふわりと2人を柔らかく包む。

無数にある胸のほくろは足の裏でほとんどが見えなくなっていた。


指先と爪先が、足の甲、スネ、ふくらはぎ、ヒザと、滑るみたいに移動する。

すらりと長く細い足でない事がコンプレックスの二本は、両膝で縛られて動かそうとすれば食い込んでいった。砂埃の足の裏をなめられるのが恥ずかしくなって声が出る。思っている声が出ないので、余計に恥ずかしくなった。

はずかしいからもうやめてと、ネクタイをはがそうとすると、ぎゅっと足の甲を握って胸に押し当てて、顔を覗くと、じっと俯いていた。

この姿を私は、どこかで見たことがある。

老人の両手を懺悔するように温めていたあの男の後ろ姿。かなくんとあの男の人が重なる。


胸に足の裏を当てて両手で包み込む姿を下から見上げている。足先が完全に胸の温度と同じか、それ以上に熱を帯びているのがわかる。あしさきから頭の先に抜けるように全身にかなくんの熱がこみ上げてくる。

私の体が、どんどんと熱を帯びていく。照れているだけかとおもったけどそうじゃないらしい。


私の冷たくて哀しい感情を全部を、かなくんの胸が吸い込んで、かなくんの熱が足の裏から入ってきて満たされている。満たされてあふれているのを全身で受け入れている。

俯いて目を閉じるその顔に触れたいと思う。掴んでる手の付け根の、その肩に触りたいと思う。

肩から伸びる膨らんだ二の腕を掴みたいと思う。今はまだとても遠く、満たされて溢れれば溢れるほど、どんどんと遠くに感じた。

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