地球の三角、宇宙の四角。
途中まですごく良かったような気もするけど、良いとも悪いとも言えない行為が気が付いた時には終わり、のしかかる彼の重みと熱が下がっていく彼の体温を感じていた。

彼とのたわいの無い話の最中でも、私の頭の隅では私ちゃんと平純一が残像のように張り付いていた。

この前食べた薄皮ミルクティークリームパンがおいしかったというどうでもいいような話題が終わったあたりで、かなくんは寝てしまって、ちょっかいをかけては目を醒ましてくれるが、しばらくするとまたぐうぐうと眠ってしまい。その間隔が徐々に短くなっていつの間にか、かなくんは完全に眠ってしまっていた。

寝顔を見ながらこんな風に思う。

また気を失ったりしたら、私はまたどこかへ飛んでいってしまうのだろうか? ましてや寝てしまったら、今度起きた時には私はどこにいってしまうのだろうか?

もっと大事な話。薄皮ミルクティークリームパンよりも大事な話をするべきではなかったんだろうか? 私はこの満足げに幸せそうに眠る彼に伝えなきゃいけないことが、沢山あったのではないのではないか。

そしてこのかなくんは、今どこにいるのだろうか?

私の事を見ることもしない、思いや考えを感じ取ることも察する事もしてくれないで、ぐうぐうとただ植物のように眠るというこの状態とは、どういう状態なんだろうか。寝て起きるのが当たり前過ぎて、考えたこともなかったが、あの黒い影を見てからというもの眠る事や、記憶がなくなる。意識がなくなるということが怖くて怖くて堪らない。

だけど彼が見てくれている時だけは、彼が私を見てくれている時だけは私であり続けることができていたように思う。

彼が私のことを触っていくれるときだけが、私でいることを保つことが出来ていた。行為の最中ではこのまま消えてしまってもいいとさえ思えた。なのに、その彼が寝ている。こんなに近くにいても見てもくれないし触ってもくれない。

こんなにも近くにいるのに、さっきまであんなにも見てくれたのにと、そういうことばかり考えるとますます自分が今まさにどっかに行ってしまうのじゃないのかと不安になる。少し前の消えてしまってもいいとは随分と違ってて、朝と夜ほどに違う。平純一の言葉を思い出す。「この世界が不安定で形を保てなくなってる」という言葉。

「この世界」とは、どういうことだろうか?

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