地球の三角、宇宙の四角。
天井を見つめながらぐるぐると同じような事ばかりを考える。

「どう思いますか?」

声に出してみる。この世界にいたであろう私の体の中にいるのかもしれない自分の中の自分に問い掛けてみた。

返事はない。空気清浄機と空調の音がするだけだ。

さっきまで気にもしていなかった音だが、意識をして聞いてみるとそれは結構大きな音になった。

音だけを聞いていると私は集中力が続く限り自分を切り離せていたように思えた。大きな耳。全身が耳だ。耳が全身。耳の穴が私。

だけど、誰も語りかけてくることはなかった。少女も平もアナウンサーの声もナレーターの声も、この世界にいたはずの自分の声も。

「コンバンワ」と小さく裏声を出してみた。ラブホの天井に向ってコンバンワと裏声を出す自分に、我が事ながらなんだかバカバカしくなった。考えても考えなくても無駄だ。

たとえば、この世界の私と今の私が重なっているとして、上書きされるように重なっているのだとしても、それをそのまんま、まるっと受け入れてみようと思う。もうそういう覚悟が出来た。あるいは、あきらめというか。今までだってこうしてきたじゃないか。という境地。うん。境地。

私は木下家に生まれましたという場所から始まった時点で、いくつもの選択肢はあったにせよ完全に自分だけで決めた事よりも、後からそういうものだと納得したモノの方がどれだけ多いことか。

そういう考えに至った時点でなんだか妙に気持ちが楽になった。

なるようになるか。

なるようにしかならないか。

まぁ、どうでもいいや。と、ごろごろと寝返りを打った。

寝て起きて、寝た場所で目が覚めない事がたとえあったとしても、あーあ。またか。なんて受け入れようじゃないか。

長い長い夢オチならいいのに。夢オチならそうだなー。

会社の最上階フロアのソファがいいな。

せめて夢の中でも、あの場所にいけないものかな。





< 139 / 232 >

この作品をシェア

pagetop