地球の三角、宇宙の四角。
目が覚めると寝癖の後頭部があって、掴んでグルンとやるとかなくんの顔で、なんだか安心をして二度寝に突入しようとした。

すうっと睡魔に包まれるようにして今度は青空の下のベンチに二人。着物を着た昭蔵さんの膝枕で一路君が膝を折り曲げて寝転んでいる。

おじいさんの顔を見上げながら、一路くんはクチを開けて呆けたように笑っている。

「この瞬間が永遠に続けばいいのに

って、しょうさんもそうは思わない?」

「そうだね」

小さい飛行機が、じわじわじわと右へと流れていく。雲の流れがほとんどないので、ほんとうにじわりじわりと。

「天気が良くてさ

おいしいお弁当を食べたばかりでお腹がいっぱいで

今までとかさ、これからとか、そういうのから切り離されてて

思いついたことを言えばさ、しょうさんが聞いてくれるの

ホラ飛行機」

指差したほうを昭蔵さんは見るのだけど、見つからないのかあちらこちらを探すように一生懸命に目を細めた。

「あそこだよ、あそこ」

「どこ?」

「後ろ側が赤いから」

小さすぎて見つからないはずなのに昭蔵さんは、ああと見つけたふりをしている。

「ほんとに?」意地悪な顔で着物を掴んで少しだけ引っ張る。

「あそこだろぅ、随分小さいね」と、見当違いなところを見つめていた。

「明日もさ、こんな日だったらいいのにね」

「そうだね」と昭蔵さんは飛行機の見つからない空を眺めながら答えた。


「でもさ、昭蔵さん」

「ん?」

「たまにこう思える瞬間があるから、今まで生きてきたんじゃないのかなと思うし、明日も生きてみようかな、なんて思うのかもね」

「そうだね」


「たぶん、毎日こんなじゃぁダメなっちゃうんだろうな

そう思うと、なんかね」

見つめる視線に気がついた昭蔵さんは一路くんの目を上からのぞき込むようにして見つめた。

一路くんはそらすことなく昭蔵さんの言葉を待つように黙りつづけた。

「そうだね、いちろくんはワシがいなくなったらって

考えるのかな」

「さー

考えるけど、考えたくないというのが本当のところかな

かといって一緒に死のうなんてのも、もったいない。

また、こんなふうに思える日が来るかと思うと、それはもったいない」

おじいさんは照れて青空を見上げた。

男の子は見上げるおじいさんの顎と空をながめ。

おじいさんと同じ青空を見た。
















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