地球の三角、宇宙の四角。
「おなかすいた~。はゆみは、何食べる?」
ペラペラ何回もメニューをめくりキョロキョロと視線を動かしてソワソワしながら嬉しそうに聞いてきた。

最後の晩餐になるかも。お昼だけど。

なんて、思ってもないブラックな発言が脳内に響いてはっとする。

「どうした?」

「いえ、なんにも、かなくんは?」

なにか特殊な電波を受信してるなんてことを言えるわけもなくあたりをキョロキョロと見渡すが、隣のテーブルは楽しそうにしゃべるカップルで、かなくんの奥に見えるのは若い男の2人組。特別変わったことはない。かなくんと一緒にいて頭の中に変な声が聞こえたのは久しぶりだ。勝手に自分がしゃべってしまってるのではないかと心配したが、そうでもなさそう。

「手術の前ってさ、ゴハン食べても大丈夫なのかな?」

「大丈夫じゃないかな。 脳…」

脳の手術という言葉を出そうとしてギリギリで止めたせいかウキウキしていたかなくんの顔が曇った。

「大丈夫だよね。でも……」

かなくんが黙り込むと隣のカップルのテーブルから、「もう、ゴハンたべたくない!」という男性の声が聞こえた。

「え?」と驚く身なりのちゃんとした綺麗な女性。

男の方も眼鏡を掛けた結構いい年をしてそうなちゃんとした大人だ。だから目を疑った。声の調子は強めだが言い争いや揉め事では無いと思うんだけど、女性のほうは店内の空気が読めるのか、恥ずかしそうに男の人を見つめていた。

「もう、僕。ロイヤルホストいかへん!」

(なんで関西弁?)

かなくんと2人、しっかり見たらいけないんだろうけど、もう隣のテーブルに意識と視線は釘付けでメニューどころの話ではなくなっていた。
< 150 / 232 >

この作品をシェア

pagetop