地球の三角、宇宙の四角。
白い天井が勢いよく流れている。下の方からゴロゴロという音を身体全体で聞いて、大きくカーブを曲がった。

息苦しく、圧迫感があり、身体がとても重たい。

足下には白衣の人、揺れる点滴。点滴?

病院。

だけど、違う。順番が違う。

記憶の糸がぐしゃぐしゃにからまっている。

“記憶の前後があいまいになる”

“その事が先に起こったのか後に起こったことなのかがわからなくなる”

“手術を受けてはダメだ。アンタは病気じゃない。個性だ”

“病院で全身麻酔を受けろ。その時なら深く繋がれる”

“はゆみが、ずっと傍にいてくれるのなら僕は何だって差し出す”

“飼っている猫に外なんて見せるべきではなかったのだ。あんただってそう思うだろう?”

違う。いきなり今じゃない。いろいろあって今。記憶、消えるな。いきなりはじまったり終わったりなんかはしない。

薄いぺらぺらの膜のようなものが今とか一瞬であっても、これまでも積み重ねてきたし、これからも積み重ねていきたいから、頼むから頭、今までに何があったのかを思い出して教えろ。

強引に紐を引っ張ったら絡まった記憶の中から一本の線がずるずると抜けた。

ファミレスで暴れているシーンで、それを俯瞰で見ている。はずかしくなるほど大きな声を出し、テーブルをひっくり返したり食器を投げつけている。

こんな事が本当にあったんだろうか?











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