地球の三角、宇宙の四角。
病院が見えてきて、施設内に入ったときには後悔をした。

ロータリーには行儀良く色とりどりの車が長蛇の列を作っていた。

タクシーの運転手が立ち話をしている姿を横目に少しずつ進む。出入りが激しいので進は進むが、あと2台というところでピタリと止まる。これなら近くのスーパーの駐車場に止めて走った方が早かったなと思うとまたiphoneが光った。

『そんなしょうもないことで使うな。降りろ』

いきなり喋るアプリなんか入れたのかなと画面に触るとビリッと指先が痺れて、映美が窓に足をかけて飛び降りる映像が浮かんだ。

この映像は何度も見ているような気がする。何度も間に合わなかったような気がする。

『はやく降りろ、間に合わないぞ』

そんなゆっくり喋りながら急かされてもなぁ、ここに車置いて降りられないだろうと馬鹿馬鹿しくて声に出さないままあたりを見渡すと客待ちのタクシー運転手、お年寄りの手を引くおばさん。やる気満々の日に焼けた車を誘導するガードマン。

もう一度ちらっとiphoneを覗くと「行け」と電子音でしゃべる。こんなこと信じないからなと思いながらもさっきのトラックのシーンが蘇る。

舌打ちをひとつして、駐車場ゲートの入り口と出口にあるゼブラゾーンにあわてて止めに来るガードマンを無視して車を進めた。

ドアを開けるとガードマンがお客さんここはさすがに迷惑ですよというもんだから、邪魔になるようだったら動かして下さいと鍵を渡した。

勢いでどうにかなるもんだなと思う。大概の無理は勢いだけでその場は乗り切れてしまうものだ。あとがどうなるかは別として。






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