地球の三角、宇宙の四角。
この時間、エントランスは間接照明だけになる。

エレベーターホールまでの道中、幸村さんはキョロキョロとしながら歩いていた。

「どうかしました?」

「いや、なんでも」

と、言ったきり首こそは振らなくなったが目線を左右へと振り、鼻を時折クンクンと鳴らしては、いよいよ立ち止まってしまった。


大きなため息をついて、幸村さんは「こんな時間から出るのか」と小さくつぶやいた。

「キノさん、上になんか忘れ物ある? 財布とか貴重品とか、家の鍵とか」

「え? どうしたんですか」
脇に鼻を近づけてセルフ体臭チェックの最中だったのでビックリした。


「キノさんも、見ておいた方がいいのかな」

1Fに止まってあるエレベーターの扉が開いた。

エレベータの中には、黒くて丸い穴のような黒い物体があった。

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