地球の三角、宇宙の四角。
エレベーター脇の仰々しい観葉植物が目に入る。

瞬時にして持つべきところ2点が、赤く光った。無我夢中で掴んで持ち上げるが、幸村さんにぶつけるわけにもいかず、目に飛び込んだ消火設備にぶつけるとジリリリリリとけたたましい音が鳴り出した。

「はやく、30階にいけ! この時間なら支店長が居る」

エレベーターが閉まる。エレベーターの光が無くなっていく分だけフロアは薄暗くなっていった。

どうしたらいいのかわからずに、ぴくりとも動かない幸村さんと同じように動けないし、何も出来ないまま、黒い液体がどんどんと無くなっていくのを眺めることしかできなかった。

「幸村さん!」

だれか、助けて下さい! そんなことを叫ぶ余裕とか発想すらなく本能で、ただ、幸村さんの名前を何度も叫んだ。

揺れる懐中電灯と、外の方から近づいてくる足音に、力が抜けた。


「どうしました!」

「大丈夫ですか!」

何人かの男性の大声が近づいてきた。



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