地球の三角、宇宙の四角。
夜になって、上司の庄谷課長とさおりんがお見舞いにやってきた。

庄谷課長はグラマシーニューヨークのケーキを持って、自分の部下に対する体調管理能力の無さを詫びていたが、それは自分の問題であるということを告げた。そんなことよりも気になることがあるのだ。

「幸村さんは?」

「ゆきむら?」

さおりんまで首をかしげている。

「なんで、ですか! なんで?

私の倒れた時に一緒にいたんです。残業も3人でやりましたよね……なんで?、なんでですか!」

意外なリアクションをした2人に多くの言葉で説明をする。本社からきた、ドイツ人のクォーターで……

話せば話すほど、2人の顔が曇っていく。さっきの2人と同じだ。2人に幸村さんの事を説明していること自体がどうかしているというのに。

「会社に仕事残してるので帰るわ。木下、おだいじにな」

課長がそう言って席を立とうとする時にメガネの事を思い出した。

「メガネです! メガネ!」

幸村さんがかけていた、あのメガネ。

ベットの横にある棚。たたまれた自分の服の上おいてあるメガネを掴んで、2人に見せた。


「これです! このメガネ。幸村さんが、かけていたヤツです」

と、メガネを課長に渡した。

「課長かけてみて下さい」

しぶしぶ課長は、メガネをかけたが、その後しばらく固まっていた。

「どうですか、遠くを見て下さい」

窓の方を指差してうながす。

課長は、窓の外を見た後に眼鏡を外して私に渡してきた。

課長の目には涙が浮かんでいた。



課長から手渡されたメガネをかけてみると、少しだけ度の入った普通のメガネだった。

「なんで?」

そんなはずはない。こんなはずはない!

「はゆみ」

さおりんが心配そうに声をかける。

課長は無言でカバンを持って立ち上がりドアの方を向いた。

「また来るから」

と、背中を向けたまま言うと、部屋の外に出て行ってしまった。

さおりんも、そわそわとしだしたので、「もう少しだけ居て」と強く言うと、少しだけ冷たい表情をみせて椅子に座り直した。

「最初から全部、話してみてよ」

と、さおりんは笑った。

無理をしているのか少し表情が、こわばっている。


まず、しょうゆというオンライン小説を読んでいたことを説明すると、さおりんは、手を挙げて話を止めた。

「その小説は、どこのサイト?」

「orz mall(オツモール)だよ」

iphoneをいじりながらサイトが見つからないのか、さおりんは首を振るので、【しょうゆ BL】で検索してみてと頼むと、あんた何を読んでるのよと言いながらも調べてくれた。

だけど、それらしいものは見つけることが出来なかった。

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