地球の三角、宇宙の四角。
それから幸村さんの話、仕事の数字の話、メガネの話、エレベーターの出来事、警備員が消えた話、エレベーターのハイスピードモード、支店長。覚えている限りを順を追ってありのままを説明した。

一部始終を話し終えた私の顔を見ながら、さおりんは「はゆみ。わたしは、しんじるよ」と言ってくれた。

ありがとうと言う私に応える笑顔も、その後に見せた顔も、私の知っているさおりんの顔とは少し違っていた。

信じるという言葉。なにかの裏返しの言葉なんだろう。

哀れみが混じるのは構わない。

ただ、自分にだけ起こった。なんてことがありえるのだろうか? それが一番信じられない。私の見てきた物とさおりんの見てきたものが違うなんて事が本当にあるんだろうか?

それを違う違うそうじゃないと言い続けたところで伝わらないのは当たり前なのだろうか。

当たり前なんだろうけど、こういうときに私はどんな顔をしていればいいのかわからなかった。

自分は悪くないとは思う。けど、ただ反省するしかない。わけのわかんないことばかり言って困らせてごめん。


さおりんは、いつも話を聞いてくれてる。なんでもわかってくれるし、わかろうとしてくれる。

全部聞いてくれた後で、ちゃんと自分の答えも出してくれる。

だけど、今回、さっき話した話の殆どがさおりんには伝わったとは思えない。

さおりんが帰った後もしばらく「私は信じる」という言葉を思い返しては涙があふれた。

私が逆の立場なら、あんな強い言葉を言ってあげられるのだろうか。




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