地球の三角、宇宙の四角。
部屋でメガネをかけてぼんやりとしている。話を沢山すると疲れる。考えることが多すぎて疲れた。

だけど、考えることは止まらない。こんなことって実際にあるのだろうか、もうなにがなんだか意味がわからない。そんなことばかりを、いつまでも考えている。

かけたメガネを遠くにしたり近くにしたりとしてみるが、レンズの向こうはぼやけたりするばかりだ。

かけてみてたところで、賢くもならない。だったら私が見たコンビニの、あの風景はなんだったんだろうか。あの賢くなった感じは。

窓に映るメガネをかけた自分は、なんだか似合ってはいないし、賢そうには見えない。

「幸村さん」と、外した眼鏡に問いかけた。


さおりんが帰ってから1人で、どれぐらい考え込んでいたのだろうか、ドアが開いて庄谷課長が部屋に入ってきた。

手にはフルーツバスケットと花束を持っていた。

「はゆみ、具合はどう?」

はゆみ? 違和感がある呼ばれ方、なのに課長は、はゆみとさらりと言った。

「課長、どうしたんですか?」

「ん? 何、その呼び方。会社じゃないんだからさ」


荷物を置きながら「花瓶あるかな?」とキョロキョロとしているうちに目があった。

よほど変な顔をしていたのか「どうした、そんな顔して」と聞かれた。

「どうしたんですか、2回も、それに果物とか花とか」

「来る途中に買ってきたよ」

「いえ、そんなことじゃなくて」

「そんなことって、どんなこと? まだ具合良くならないのか?」

と、私のオデコを目がけて手が伸びてくる。

首を反らせてそれを、かわした。

課長は、「なになにー」なんていいながら楽しそうにベットの上に登って近づいてくる。なんだかものすごくなれなれしくて気持ちが悪い。どうしたんだろうか? この人。



< 40 / 232 >

この作品をシェア

pagetop