地球の三角、宇宙の四角。
「はゆみー」と言いながら、もう一度手をのばしてくる。

その顔に違和感こそあれ、冗談とかそういう色がしない。
ごく自然に近づいてきた。

その手を掴んで止めると、もう片方の手が、私の肩のほうに伸びてきて掴まれた。全身に嫌悪感だけが広がる。

そのまま課長は顔を近づけてくる。

「セクハラで訴えますよ?」

冗談の色を含ませず真剣に言った。

「なんで? ここ会社じゃないし」

身をよじってナースコールを押す。

「はゆみ!」

「その呼び方やめて下さい」

「なんで? 会社じゃないからいいだろ? まさか」

課長の手がゆるんだ。そして、ある仮定が頭に浮かんだ。

でもまさか、そんなこと……。

「ご、ごめんなさい」

ハッキリとは意味がわからない。

わかりたくもない。

あやまることしかできないし、認めたくもない。

「まじかよ・・・はゆみ」

そう言うと課長は力なくベッドをへなへなと降りていった。

はゆみという呼び方。さおりんが居るときと居ないときの態度の違い。そういうことなんだろうか。

ナースコールで駆けつけた人のノックの音がして、「木下さんどうされました?」という声。

ベッドを降りた課長と目が合う。

ドアが開くとキツネ目の女だ。
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