地球の三角、宇宙の四角。
「すいません。ボタンを押してしまって」
と、課長は、後ろを向いて頭を下げている。
「どうかされました?」
「こんなことって、あるのですか?」
私に背を向けた課長は、女の人に言った。
「なにが、ですか?」
「ボクのことを覚えているのに、覚えていないということです」
女の人は表情を変えずに答える。
「MRIの検査結果が出てないので、今はなんとも言えませんが暫くは、そういう状態が続くかもしれません。
一時的な物だと良いのですが、……少し、いいですか?」
と女の人が言って、2人は部屋を出て行った。
私は、課長の言ったセリフのひとつひとつを思い返しながら放心状態で時間を過ごした。