地球の三角、宇宙の四角。
「ああ、よかった」

そう言ったのはウチの母だ。

「はゆみ、わかる? お母さんよ」

この人は何を言っているのだろう。まだ水の中で音を聞いているようだ。母の隣には白衣を着た知らない人。その後ろには課長が立っている。 課長?! なんで?

「よかった。 ……院長の坂上です。こんにちは」
酷く痩せて爬虫類のような男。髪の毛はボサボサで目だけがギョロギョロとしている。

「MRIの結果が出ましたが、もう少し後の方がいいかな?」

なにが、いいかな? だ。
調子こいた言葉尻と、そのイントネーションが癇に障る。
緩いウエーブのかかったボサボサ髪をかき上げながら大きな封筒を取りだして言った。


母が心配そうに見つめてくる。

教えて、下さい。そう答えたいのだけど話すコツのようなものを忘れている。体を動かすことも出来ないのではないかと手や足を動かそうにも何処に力を入れていいのかピンとこない。腕には管が刺さっており、オデコの両側には違和感があり、そこから白と青のねじれたコードが伸びている。息をすることにも意識が行き、今、吸っていいのか吐いていいのかが、わからなくなり頭の中が混乱し始めて過呼吸のような状態になった。
爬虫類のような男があわてて私の鼻と口を押さえてきた。


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