地球の三角、宇宙の四角。
しょうゆさんの夢から覚めた私の目の前には課長だけがいた。

課長は椅子に座ったまま、両手をだらりとさせてクチを開けて寝ていた。

目が覚めて人がいるというのは安心する。

課長は夢を見ているのだろうか?

私はどれくらい長い夢をみていたのだろうか? つい、さっきまで鮮明に覚えていた夢の中のシーンが思い出そうとすればするほどにさらさらと細かい粒子になって形を保てなくなって消えていきそうだ。サイドテーブルにあるメモ用紙に【しょうゆにまみれた老人 しょうゆ 男が泣きながら殴る 自分の出てこない夢】と殴り書きをする。

全部が夢だったらいいのに。

だけど院長先生の話の途中ぐらいで寝たというイメージとしての感覚は記憶しているし実感できた。

それがどれぐらい前であるのかが解らない。病院に来る前からもそうだった。自分が、どれぐらい寝たのかどれぐらい長い夢を見たのか、それを正確には把握はしてなかったし。

しかし、それにしてもなんて夢を見るのだろうか。

自分が出てこない夢というのは夢判断では、どういう心境なんだろうか?

そんなふとした疑問もインターネットで“自分が出てこない夢”と検索すれば、それなりにわかるというのだから世の中便利になったもんだと思う。

ケータイ電話に手を伸ばすと、うわっと声を出して庄谷課長が起きてしまった。

「うわ! ビックリしたー」

「ご、ごめんなさい」

【ごめん】と、老人の声がなぜか頭で再生される。夢で見たシーンは『しょうゆ』のまだ読んでない部分なのか、つづきを読みたいという私の願望の投影による創作なのか……

「具合はどう? はゆみ?」

優しい手が頭をなでた。







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