きみを奏でる僕の指先。


彼の唇が、優しく私の唇に触れる。



彼の細く長い指が、私の身体をなぞる。



優しく、音を奏でるように。




「…ダメ、深谷君…


これ以上は……」



拒みたいのに、力が出なかった。


甘くとろける感覚。



ゆっくりと、落ちてゆくように。


……駄目。



このままでは、後戻り出来なくなる。


彼まで、汚してしまうことになる。


それだけは、絶対にあってはならない。









……もうこんな思いをするのは、


私だけで充分だ。








「…離して。

いい加減にしなさい」




私はそう声をあげると、彼の身体をつき離した。





「……もう充分でしょ?

これ以上何かしたら、人を呼ぶから」


「先生……」


彼がどんな表情をしているのか、直視することが出来なかった。


私は彼に背を向けて続ける。






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