きみを奏でる僕の指先。
「…落ち着きましたか?」
気付いたら、私は彼に抱きしめられていた。
「ちょっ…?!な、何してるのっ…」
私は慌てて彼の胸から離れる。
「何って…
吉井先生、急に泣きだすから…
そういう時って、普通抱きしめるものでしょ?」
彼はしれっとそう言った。
「こっ、これは別に…
第一抱きしめるなんて、普通しないでしょう!
私は教師なんだからっ…」
私は慌てて涙を拭った。
おかげてもう涙は流れなかった。
「吉井先生が“教師”で…
僕が、“生徒”だから?
“教師と生徒”だと、抱きしめちゃいけないんですか?」
「あっ、当たり前でしょう!」
…そんなこと、あってはならない。
“教師”は“生徒”に、沢山のものを教え与える存在。
尊敬されるべき大人の鏡。
決して、“男と女”であってはならない。
…そんなの不純だ。
汚らわしい。
人として最低だ……。