奇跡事【完結】
「……魔力は個人差があるけど、誰もが持っているんだ。
俺はその“普通”よりも少しだけ強かった」
「それじゃあ、この街の人も?」
「ああ。あの店番の親父とかもな。その力は普通に生活していたら気付かない。
魔力が皆無の人間の方が少ないんだ。……ただ、お前達はそれだった」
「……皆無だったって事?」
「そうだ。俺はこれでも一応魔力が強い方だからな。
魔力ある人間の区別はつく」
そういえば。
カタラはケーラ村に来る時も、魔力を感じなかったとか言っていた。
カタラ自身に魔力があったからなんだ。
「三人揃って魔力が皆無だなんて、あり得ないと思った。
パチフィスタも言っていたな。エレノアの神殿に入れるぐらいの力を持っていると」
「うん」
「……俺には到底理解出来なかったが、神殿から出た後のキョウの魔力の底の深さで納得した。
中で何があった?」
「……」
「ああ、悪い。別に問い質したいわけじゃない。大体の想像はついている。
魔力の抜け落ちたキョウの短剣を見てな」
「魔力の抜け落ちた?」
キョウの短剣から魔力が抜け落ちたってどういう事だ?
僕の顔には意味不明だと書かれていたのだろう。
カタラは少しだけ含んだ笑いを漏らす。