奇跡事【完結】


「……そうだ」

「キョウに限ってそんな事」


僕とキョウは幼い頃からずっと一緒にいるんだ。
そのキョウが悪に手を染めるなんて事。


そう、思うのに胸に広がるこの不安は何だろうか。


キョウを信じてるのに。


「人ってな、脆いんだよ」

「え」


僕は気の抜けた声を出すと、カタラを見やる。
だけど、カタラの視線は窓の外を向いていた。


「……愛する者を失うと、途端に道を踏み外してしまうんだ」



それに僕は何も言えなかった。


「……話しすぎたな。俺はそろそろ寝るとするよ。ルーイ。
お前も今日はゆっくりと休め。何も考えずに、な」

「うん」

「おやすみ」

「おやすみ、カタラ」


布団に潜り込んだカタラを見届けてから、僕も再度布団に潜り込んだ。
静かに目を閉じる。

そして、思った。
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