奇跡事【完結】
「……」
痛みに耐えながら、僕は耳を澄ます。
微かに聞こえてきたエレノアの声。
――――――――――私が、怖い?
その声に背中が粟立つような感覚。ゾクリとした。
ひたひたと恐怖が僕の足元からにじり寄ってくる気がした。
そんなわけないのに。
――――――――――聡い子。だけど。
エレノアのクスクスとした笑いが聞こえる。
僕の眉間には一層皺が寄った。
言葉を区切ると、エレノアは嬉々とした声で。
――――――――――――それはきっと、貴方を苦しめるに違いないわ。
そう、言った。
その時は何の事を言ってるのかなんて、わからなかった。