奇跡事【完結】
海
目覚めたのに、頭がぐわんぐわんと回ってる様な感覚。
ポンっと肩に誰かの手が置かれて、僕はハッとした。
「大丈夫?」
そう声をかけてきたのは、――――カノだった。
正気に戻った僕はすぐに笑顔を作ると、頷く。
「大丈夫、ありがとう」
「そう」
僕がニッコリとすると、カノも同じように微笑み別の場所へと向かった。
カノって不思議だ。
記憶が失くなっているにも関わらず、笑顔を見せたりしていて、落ち込んだりしてる様子はない。
何もわからないってのは不安じゃないのだろうか。
僕は記憶を失くしてなんかいないけど、知らない事ばかりで漠然とした不安を抱えているというのに。
これは僕が弱いからなのだろうか。
もっと、強くなれば。
こんな不安も感じないのかな。