奇跡事【完結】
「何、キョウ」
「近い」
「何が」
「ルーイに近付きすぎ」
「え?そうかな?キョウ、突然どうしたの?」
「ううん。サーシャはちょっと無防備過ぎるから」
「何それ。わかんないんだけど」
「いいから、俺の側にいて」
「意味不明」
「つべこべ言わずに、俺から離れないで。
何かあった時にサーシャを守れないから」
まだ文句を言ってるサーシャだったけど、キョウの剣幕に押されて渋々後ろを付いて行った。
……キョウ?
どこか、様子がおかしい。
どうしたんだろう。
まさか。魔力を解放したから?
いやいや、まさかな。
そんなわけないよ。
キョウはいつも通りだ。
「ルーイ、ぼーっとしてると置いてくからな」
そうやって笑いながら話しかけてくるキョウ。
ほら、いつも通りだ。
僕の勘違いだ。
ぴったりとサーシャを自分の後ろにくっつけて移動させるキョウ。
だけど、キョウは言っていた。
もうあんな想いをしたくないって。