奇跡事【完結】

「何、キョウ」

「近い」

「何が」

「ルーイに近付きすぎ」

「え?そうかな?キョウ、突然どうしたの?」

「ううん。サーシャはちょっと無防備過ぎるから」

「何それ。わかんないんだけど」

「いいから、俺の側にいて」

「意味不明」

「つべこべ言わずに、俺から離れないで。
何かあった時にサーシャを守れないから」


まだ文句を言ってるサーシャだったけど、キョウの剣幕に押されて渋々後ろを付いて行った。


……キョウ?
どこか、様子がおかしい。

どうしたんだろう。


まさか。魔力を解放したから?


いやいや、まさかな。
そんなわけないよ。

キョウはいつも通りだ。


「ルーイ、ぼーっとしてると置いてくからな」


そうやって笑いながら話しかけてくるキョウ。
ほら、いつも通りだ。


僕の勘違いだ。


ぴったりとサーシャを自分の後ろにくっつけて移動させるキョウ。
だけど、キョウは言っていた。


もうあんな想いをしたくないって。
< 116 / 446 >

この作品をシェア

pagetop