奇跡事【完結】


あの光景を見て、二人がどう感じたか。
それを知ることは出来ないけど、きっと僕と同じように感じた筈だ。

自分を責めた筈なんだ。


カタラはまだ腕を支えていたけど、昨日よりは幾分元気そうだ。
これが魔法の力ならば、相当だ。


本当、死ぬかと思ったんだ。


宿を出た僕達はカタラに付いて行く。



「パチフィスタ」


カタラは足を止めると、そう呟いた。
俯いていた僕はそれに顔を上げてパチフィスタを視界に捉える。


やっぱりパチフィスタは不敵に微笑んでいた。


「どうだ。パチフィスタは一緒に旅に出ないか?」

「ええ。嫌だよ、僕。疲れる事嫌いだし」

「パチフィスタは頼りになるんだよ」

「またそう言っておだてて。今日、僕はサヨナラを告げに来ただけ」

「サヨナラ?」

「うん。きっと、もう会えないと思うから」

「……どこかに行くのか?」

「僕は行かないよ」

「じゃあ、誰とだ?」

「ふふ、誰だろうね」

「なんだ、それは。また意味深な事言って、惑わそうとしてるのか」



カタラははあっと溜め息をつくと、そう言うがパチフィスタの笑顔は崩れない。
ニッコリと微笑むパチフィスタ。

その顔からじゃ真意は窺えない。
< 117 / 446 >

この作品をシェア

pagetop