奇跡事【完結】
あの光景を見て、二人がどう感じたか。
それを知ることは出来ないけど、きっと僕と同じように感じた筈だ。
自分を責めた筈なんだ。
カタラはまだ腕を支えていたけど、昨日よりは幾分元気そうだ。
これが魔法の力ならば、相当だ。
本当、死ぬかと思ったんだ。
宿を出た僕達はカタラに付いて行く。
「パチフィスタ」
カタラは足を止めると、そう呟いた。
俯いていた僕はそれに顔を上げてパチフィスタを視界に捉える。
やっぱりパチフィスタは不敵に微笑んでいた。
「どうだ。パチフィスタは一緒に旅に出ないか?」
「ええ。嫌だよ、僕。疲れる事嫌いだし」
「パチフィスタは頼りになるんだよ」
「またそう言っておだてて。今日、僕はサヨナラを告げに来ただけ」
「サヨナラ?」
「うん。きっと、もう会えないと思うから」
「……どこかに行くのか?」
「僕は行かないよ」
「じゃあ、誰とだ?」
「ふふ、誰だろうね」
「なんだ、それは。また意味深な事言って、惑わそうとしてるのか」
カタラははあっと溜め息をつくと、そう言うがパチフィスタの笑顔は崩れない。
ニッコリと微笑むパチフィスタ。
その顔からじゃ真意は窺えない。