奇跡事【完結】
「カノは海を知ってた?」
「え?うん、見た事はあったと思うよ」
「そうなんだ。僕は初めて見たけど、凄いや」
「……私は飲み込まれそうって思うよ」
「飲み込まれそう?」
「うん。夜の海ってのは、暗くて不気味だから」
「そうなんだ」
「昼に見せる姿はこんなに綺麗なのにね」
「そうだね」
まだ海を見る!と豪語していたサーシャを宥めながら、僕達は船の出航まで食事をとることにした。
港町は人がたくさん行きかうからか、様々なお店がある。
それはマヒアの比じゃない。
マヒアも十分に楽しかったけど、ここはもっと種類が多い。
「ここの飯はうまいから、食べておけ」
「そうなの?楽しみー」
カタラが一件のお店へと入っていく。その後ろに付いて行くのはサーシャだ。
キョウは黙ってそれを見ていた。
……その視線がどことなく鋭く感じたのは気の所為だろうか?
「キョウ」
だから、思わず僕は声をかけていた。
声をかけた途端、その瞳はふっと和らぐ。
そして、振り返ると微笑んだ。