奇跡事【完結】
「……私達だけここに取り残されたみたい」
手すりに手を置くと、ぼそっとサーシャが呟いた。
「そうだね」
「綺麗だけど、怖いね」
「うん」
サーシャの意見には同意だ。
頷き、また水平線に視線を向けた時。
「へっくしゅん!」
サーシャが思いっ切りくしゃみをした。
「風が冷たいね」
「これでも着ておきなよ」
すぐにキョウがサーシャに自分の上着をかける。
「でも、そうしたらキョウが寒くなるよ」
「俺は平気」
「……ありがとう」
サーシャはその上着に腕を通す。
サイズが合ってなくて、ぶかぶかだったけど。
キョウは本当にこういう事をスマートにこなすんだよなあ。
優しくて、カッコいい。