奇跡事【完結】
「中入ろう。風邪引いたら困る」
「そうだね。行こう、ルーイ」
「え。あ、うん」
僕は頷くと二人の後ろを付いて行った。
部屋は二人用だったから、カタラ一人と、キョウと僕、サーシャとカノに分かれて寝ることにした。
だから、そのカタラ一人がいる部屋にノックをして入る。
中ではカタラがベッドに座っていて、窓の外を見ていた。
「……ああ、来たのか」
僕達に気付くと、カタラはふっと笑みをこぼす。
「カノはどうした?」
「え?」
あれ。そういえば、どこ行ったんだろう。
三人で散策してたから、カノがどこにいるか把握していない。
「部屋かも。私、ちょっと呼んでくる」
「うん」
それから、すぐにサーシャが呼びに行くも、どうやらカノは部屋で寝ていたらしい。
起こすのも悪いから、僕達だけで話を聞くことにした。
カタラの前に僕達は座って、言葉を待った。
「……そうだな。どこから話そうか」
カタラは顎に手をつけると、少しだけ悩む様子を見せる。
だけど、すぐに話し出した。
「もう、数十年以上前の話だ」