奇跡事【完結】
眼
――――――――――――そう、それはもう数十年以上前の話だった。
他よりも少しだけ魔力が強いって事を自覚し始めた時だ。
俺は一人、森に入ると誰もいない場所で魔法を出す練習をしていた。
簡単な火の玉や、かすり傷を治す魔法ぐらいは習得出来た。
その日も同じように火の玉を手から出していたんだ。
「それって、魔法……?」
突然、そう声がかかって俺はハッとして振り返る。
デスタンの大人達に知られたら怒られる。
俺の周りでは魔法の使用が禁止されていたからだ。
これは忌み嫌われた能力だから、と。
「誰だ!」
咄嗟にそう大声を出す。
驚きながら、木の陰から恐る恐る顔を出したのは女だった。
黒く長い髪をサラリと揺らしながら、俺を見つめるその双眸は綺麗なコパルトブルー。
俺以外にこんな色した瞳を初めて見た。
「……あの、私はプリエール」
「……それで。何の用だ」
「魔法って初めて見たの!凄いのね」
「は?」
ふわりと笑う彼女は、コパルトブルーの目を細めると俺に近付いて来た。
遠慮なく俺の前まで来ると、そっと俺の手を握る。