奇跡事【完結】
「貴方の手は凄い」
「……触るな」
彼女の細くて長い指が俺の手に触れて、気恥ずかしさからぶっきらぼうにそう言い放つと、俺は手を払った。
何だ、こいつは。馴れ馴れしい。
「ねえ、貴方の名前は?」
「……」
「教えてよ、いいじゃない」
「……カタラ」
首を傾げて懇願してくる彼女に、俺はぼそっと呟く。
「カタラね。私の事はプリルって呼んで。皆そう呼ぶのよ」
「……わかった」
「ふふ」
―――――それが、俺とプリルの初めての出会いだった。