奇跡事【完結】
どうやら、プリルはデスタンに数日前に訪れたらしい。
体が強くなく、ここには有名な魔導士がいるから療養の為に来たと言っていた。
それは多分、マーク・デシーヴの事だ。
マークはデスタンになくてはならない魔導士。
ケガをした人を癒して、干からびた大地には恵みの雨を降らせて。
そんな相当たる魔法の使い手のマークだったけど、俺にも分け隔てなく接してくれていた。
平等だったんだ。
俺がまだ小さい頃、マークに言われた事がある。
「カタラ。きっと、その内気付くだろう。お前は人より少しだけ魔力が強い。
だけど、それを使うのはダメだ」
「どうして?」
その時の俺は本当にわからなかったんだ。
この魔力を磨きあげれば、マークの手助けが出来るのではないかと。
無謀にもそう考えていた。
「カタラがもっと成長して、闇に呑み込まれない程に成長したら。
その時は使ってもいい」
「闇になんて呑み込まれないよ」
「……何があるかなんて、わからないんだよ。
魔法は間違った使い方をすると、人を傷付けてしまうんだ」
「……わかんないや」
そう口を尖らせて言うと、マークは優しく微笑み、その大きな手で俺の頭を撫でた。