奇跡事【完結】
「今はまだわからなくていい。
だけど、必ずこの意味がわかる時が来る」
「……」
「もしも、使うなら愛する者を守る為に使うといい」
「愛する者」
そんな人、現れるのだろうか。
デスタンには俺と同じぐらいの年の子供は少ない。
皆、大きくなったら他の街に移民してしまうからだ。
閉鎖的なこの村の事を考えたら、当然っちゃあ当然なのだろうけど。
それに、俺の瞳の色はどうやら珍しいらしく、同じ年齢の子達からは避けられていた。
自分とは違うから。そんな理由で。
俺としては、そんな事で避ける様な奴はこっちから願い下げなんだけどな。
プリルはそんな遊び相手のいなかった俺に出来た、初めての友達だった。
最初は煙たく思っていたけど、プリルはしつこく俺に付いて回った。
だから、段々と俺も心を許すようになっていたんだ。
「やっぱりここにいた」
「……プリル」
木の上で眠っていた俺を揺り起こしたプリルは、楽しそうに微笑んでいる。
少しだけ眉間に皺を寄せてから俺はまた目を閉じた。