奇跡事【完結】


「あー。寝ちゃダメ。起きて起きて。ねえ、カタラ」

「うるさい」

「お話しようよ」

「はあ、気持ちよく寝てたのに。てか、危ないぞ。こんな木の上まで来て」

「平気だもん」

「折角の綺麗な洋服がそれじゃあ泣いてるぞ」

「綺麗だって思ってくれるの?」

「はっ?」


さっきよりも更に眉間に皺が寄る。
きっと訝しげな顔をしてるだろうに、プリルは相変わらずニコニコと何が嬉しいのか、笑っていた。

はあっと溜め息をつくと、俺はプリルに顔をずいっと近付けてハッキリと告げる。



「聞こえなかったのか?俺は洋服が、って言ったんだ」

「聞こえなかったっ」

「あのなあ」

「洋服でもなんでもいい。カタラが私に向かって、綺麗って言ってくれた!」

「……なんだよ、それ」



心の中で舌打ちを打つ。
それが表に出なかったのは、凄いいい笑顔をプリルが俺に向けてたからだ。
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