奇跡事【完結】
「ふふ。綺麗。知ってる?この瞳を持って生まれて来るのは珍しいのよ」
その言葉は俺の耳には届かない。
そいつは手の中にある、それを満足気に、そして愛しそうに見つめると、抜け殻となったプリルから手を放した。
いつの間にか俺の足から蔓は消えていて、重い足を引きずりながら一歩一歩前へと踏み出す。
……愛しいプリルの元へと向かう。
「今、貴方の瞳に映っているのは絶望?
そんな世界。見るのは半分でいいわよね?」
そう言うと、そいつは一瞬にして俺の目の前に現れた。
プリルまで後少しで辿り着いたのに。
「それ、頂戴」
躊躇なく、俺の瞳に手を伸ばすとそいつはコパルトブルーの俺の瞳を取り出した。
ブチブチと音がして、引き剥がされていく。
「うあああああああっ!!!!」
熱い。痛くて、熱い。
空気を切り裂くような叫び声をあげて俺は顔を手で覆う。
「……絶望の中、もがく姿。とても好きよ」
「悪趣味だよ」
「そうかしら?だけど、今まで何も言わなかった貴方も悪趣味だと思うけど?」
「僕はメンドクサイ事に関わらないだけ」
そんな会話が俺の頭上でされていた。
誰か、他にもいるのか?
でも、痛みで微かにしか聞き取れない。
目が霞んで顔を上げても、ぼんやりとしか見えなかった。