奇跡事【完結】
「もう用はないわ」
「……っ」
俺は立ち去ろうとするそいつの洋服を咄嗟に掴んだ。
「……」
「プリルの、その、瞳を、返せ」
「もう、生き返らないのに?」
「……!」
「絶望で黒く染まるといいわ」
「もういいよ。早く行ってよ」
「ふふ。貴方を怒らせたら少し面倒ね」
「だから嫌なんだよ」
「貴方だって用事があったんでしょ?」
「うるさいな」
クスクスとそいつは笑いながら、一瞬にしてその場から消え去った。
洋服を掴んでいたのに、だ。
もう一人の仲間はそこにまだ立っている。
ふうっと溜め息を吐くと、俺の前にしゃがみ込んだ。
「……だから、嫌いなんだよ。
瞳だけ奪い取るなんて悪趣味だ。少しだけ我慢して」