奇跡事【完結】
「僕の名前はパチフィスタ」
「……」
「何かあったら僕を尋ねておいで。マヒアにいるから」
掴みかかって、殴り飛ばしたい。
だけど、その力が入らない。
肝心な時に、この体は動いてくれない。
「じゃあね」
そう言うと、パチフィスタと名乗ったそいつは腕をスッと上げて、一瞬にして目の前から消え去った。
待て!という、俺の声も無視して。
「……、プリル!」
ハッとして俺はすぐにプリルの元へと走り寄った。
それから、その亡骸をぎゅうっと抱き締める。
「ふざけるな……、ふざけるなっ!!」
抱き締める手に力が入る。
噛んだ唇は切れて、血の味がした。
「……っ、うっ」
俺からはとめどなく涙が溢れた。
それは線となって頬を流れて行く。
プリルの瞼をそっと閉じて、俺はその唇へと自分の唇を重ね合わせた。