奇跡事【完結】
「……離せ」
なのに、カタラはブスッとしながらそう低い声で言った。
「もう、あんたが出てったの大分前じゃないか!
久々の再会でそんなつれない態度とるもんじゃないよ?」
「耳元で喚くな。うるさい」
「またそんな態度!……ん?この子達何?」
やっと僕達の存在に気付いたらしい。
カタラから離れると、僕達の方をじろじろと見る。
「……詳しい話は後でするから」
「そうだね、こんなとこで立ち話ってのも無粋か。
よし。今日は私が腕によりをかけて美味しい料理作ってやろうじゃないか!」
「ああ、頼む」
「荷物はこれだけかい?少ないね。それじゃ、カタラ。これもよろしく頼んだ!
まだ買うものがあったんだよ。ああ、助かった」
カラカラっと笑うと、カタラに無理矢理荷物を押しつける。
カタラは引き受けるなんて言ってないのに、だ。
「待ってるねー」
ぶんぶんっと手を振る彼女は嵐のようにその場を立ち去った。
僕達、誰も何も彼女に話しかけられなかった。
唖然としながら彼女を見つめていた僕達。
カタラは盛大に溜め息をつくと、ぼそりと一言。
「……あれがマークの育ての親だ」
そう、言ったから僕達は更に唖然とした。