奇跡事【完結】
「私が拾った時、既に片方は死んでいたんだ。
マークもか細い声で泣いていて、あと一歩遅かったら死んでいたかもしれない。
私は独り身だったしね、周りの反対を押し切って育てることにした」
「何で、ソアレは引き取ったの?双子は忌み嫌われていたのに」
僕はそう尋ねる。
そんな捨ててしまう親がいるのに、ソアレは自ら引き取る事を希望した。
いくら独り身だって、簡単に出来る事じゃない。
ソアレは僕を見るとふっと笑った。
「何でだろうね。使命みたいなものかもしれないさ。
捨てるという行為が許せなかったってのもあるだろうし。
この世に生を受けたら喜ばれる筈なのにね。
生まれた瞬間から愛されない人生だなんて、悲しいじゃないか」
それから、ぼそりと「昔の事だからよく覚えてないよ」と呟いた。
マークおじさんがソアレに拾われて、本当によかったと僕は心の底から思った。
ソアレがいなかったら、僕達は今ここにいないかもしれない。
「マークはとても聡明だったよ。こっちが驚くほどにどんどんと知識を吸収していった。
その魔力も成長に合わせて強まってたんだねぇ。
私に魔力なんてものはないから、全く気付かなかったよ」
「全く?」
首を傾げるカノ。
それにゆっくりとソアレが頷く。