奇跡事【完結】


「ああ、全くだ。だから、マークが私を長生きさせようと魔法をかけたのにも気付かなかったのさ。
それに気付いたのも、かなり後だったしね。
港で火事に巻き込まれたんだよ。マークを守ろうとして火の海の中、私は飛び散る破片を思いっ切り体に受けたんだ。
でも、その傷は鎮火された時には綺麗さっぱり消えていた」


それは同じだった。
きっと、キョウも思っただろう。


サーティスの時と同じだ、と。



「マークはその時、まだ10歳ぐらいの少年だったよ。
だけど、聡明だったから自分のした事の重大さにすぐ気付いて自分を責めたのさ。
自分が死なないと、ソアレは死ぬ事が出来ないと」


知らない内に、ソアレを不死身にしてしまったんだ。
マークおじさんが自責の念にかられるのもわかる気がする。


皆が口を閉ざして黙る中、ソアレはカラカラっと豪快に笑った。


「そして、自ら命を絶とうとするマークを殴ったもんさ」

「嫌じゃなかったのか?死ねない体になったんだ」


笑うソアレにキョウが難しい顔をして尋ねるけど、

「どこがだい」

と、ソアレはあっけらかんに言った。


それからソアレは続ける。


「この子が死ぬまで私は生きていられるのか。と、嬉しさしかなかったよ」



そうやって優しく目を細めて。



「マークが幸せならいいんだ」



―――――――それが私の幸せだ。
< 162 / 446 >

この作品をシェア

pagetop