奇跡事【完結】


「……サーシャ。またお前に会いに来る」



短剣をカランとサーシャの側へと落としながら、サーティスはぽつりと呟いた。
それから、酷く冷たくて通った声を響かせる。



「――――――殺す為にな」



殺す、為?


それだけ言うとサーティスはこの場から姿を消した。



すぐに僕はハッとしてソアレに走り寄った。
体をゆっくりと起こして、支える。

大量の血が僕の手にまとわりついた。
死んで、ないよね?


「ソアレ」


確認するように、僕は声をかけるとゆっくりとソアレの口が動いた。


「……、ルーイ」


まだ微かに意識があるらしい。
虫の息で、ソアレが言葉を漏らす。


「……誰か呼んでくる」


僕がそう言うと、ソアレは目を細めて笑った。


「呼ばなくて、いい。ルーイ、は、マークに似て、優しい…、子だ」

「……っ」

「あんたは、マークの……」

「ソアレ?」


そこまで口にすると、目を閉じてソアレは言葉を途切れさせた。


「ソアレ!僕は、マークおじさんの、何なの!?ねえ、ソアレ!目を開けて!」


僕が必死に懇願するけど、ソアレは動かない。
もう声を聞く事も目を開く事もなかった。

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