奇跡事【完結】
「サーシャ!平気?」
「んん……、カノ?」
「うん、サーティスにやられてサーシャ、意識を失ってたんだよ」
「サーティス?ソアレ!ソアレは」
我に返ったサーシャがカノの腕を掴んで尋ねる。
カノは俯きながらゆっくりと首を振った。
「……そ、んな。ソアレ。……ルーイ」
それから、僕の方を見ると腕の中にいたソアレに気付き、更にその顔を歪めた。
キョウもカタラも意識を取り戻したのか、惨状にただ顔を暗くした。
僕の涙はもう、引っ込んでしまっていた。
カノに言われた言葉が頭から離れない。
サーティスを倒せるとしたら、キョウか……僕?
意味がわからないよ、どういう事なんだ。
カノ。
僕はサーシャの肩を抱き、宥めているカノを見つめる。
そのカノはふいに僕に視線を寄こす。
ばちっと目が合って、カノはその目を三日月の形にした。
そして妖艶に微笑む。
僕はそれに息を呑んだ。
カノ、君は。
君は一体、誰なんだ?何者なんだ?