奇跡事【完結】
不
それから僕達は森の中で眠ることにした。
いつかの時と同じように、枝を集めて火を点けて。
まさか、ソアレの家で寝るわけにいかないし。
そして、翌日起きてすぐに港へと向かった。
疲れはあまり取れなかったけど、思考はハッキリしていてクリアだ。
いつもは笑顔のサーシャも、目の前で殺されるのを見てしまったからか、無言だ。
港に着くまで、僕達は必要最低限以外誰も何も喋らなかった。
船に乗り込み、マヒアに向かうまでが長いな。
なんて、僕はぽつりと思った。
「ルーイ」
甲板に立ち、夜の海を眺めていた僕に声をかけてきたのはサーシャだった。
ニッコリと笑っているけど、どこか影を落としていて暗い。
「……サーシャ」
「眠れないの?」
「うん」
「昨日もあんま寝てなかったでしょ」
「疲れてるんだけどね。サーシャこそ、どうしたの?」
「いや、……私も眠れなくてさ」
「そっか。そうだよね」
今、ここにいない皆だって、きっと思い思いに感じている事はあるはずだ。
口にしていないだけで。