奇跡事【完結】
「あのね、私とサーティスは双子なんだよ。でも、私だけ先に死んじゃったみたい。
どうして死んだのかまでは思い出せなかったけど。
もしかしたら双子だと知って、両親に捨てられたのかな」
「……じゃあ、サーシャがその生まれ変わりだっていうの?」
「うん。パチフィスタが私の名前を聞いて、驚いてたじゃない?
それって、もしかしたらこの記憶にも関係あるのかなって思ったんだ。
だから、これは事実なのかもしれないって」
「うん」
確かに、パチフィスタは誤魔化していたけど。
あれは明らかにサーシャを知っていた。
サーシャというより、サーシャという名前を。
「それでも、サーティスがマークおじさんを殺したって事実は変わらない。
サーティスと戦うよ、私は。……好き、だけどさ」
「本当に、好きなの?」
「うん。おかしいって思うかもしれないけど、私彼の事を好きで堪らないみたいだよ。
思い出した記憶からはそんな気持ちしか流れて来なかった。
サーティスが好きで好きで、堪らないって想い」
「……」
「キョウには内緒にしてね」
「何で?」
キョウは、幼い時からずっと一緒にいた仲間だ。
そのキョウに秘密にする理由が思いつかない。
サーシャは眉を下げると、困ったように笑った。
「ルーイは知らなかったかあ。キョウにね、好きだって言われてるから。私」
「え?」
キョウが、サーシャを好き?
初めて聞いたんだけど。
知らなかった。
唖然として口が塞がらない僕に、サーシャは照れたようにぽりぽりと頬を掻く。