奇跡事【完結】
「行きの船の中で、キョウに呼び出されて言われたんだ。
でも、その時にはサーティスの事を思い出してたから断るしか出来なかった」
「……」
「それに、私…、キョウの事を一度もそういう目で見たことなかったし」
僕だってそうだ。
恋愛とか、好きだとか、そういうのないと思ってた。
でも、キョウは違ってたんだ。
だから。
だから……、魔力を解放して強くなりたかったのかな。
愛する人を守りたかったから。
サーシャは肩にかかった髪の毛を揺らしながら、
「だから…。サーティスを好きだなんて事、絶対にキョウには言えないなって思って」
そう悲しそうに笑って言った。
それに僕は頷く。
絶対に言えない。
伝えたら、今以上にサーティスの事を憎んでしまうかもしれない。