奇跡事【完結】
「……サーシャ。僕、強くなるから」
「何?どうしたの?急に」
「うん。そうなりたいなって思ってさ。
ねえ。全て終わったら、ケーラに戻ろうよ」
「……そうだね。戻って一から始めたいね」
サーティスを倒してから、ケーラに戻って三人で仲良く暮らすんだ。
サーシャに怒られて、それをキョウが宥めて、僕は相変わらずでさ。
それがどんなに現実にはあり得ないとしても。
想像して、夢を見るのは自由でしょ?
誰にも邪魔をされない世界。
それを僕達で作りたい。
そう、強く思った。
数日が経ち、港に船が到着すると僕達はマヒアへと向かった。
僕達は前よりは笑顔を取り戻していたと思う。
少しずつだけど。
キョウにサーシャの事は尋ねなかった。
キョウが言いたくなったら聞けばいい。
それに、僕も言えない事実が多すぎるから。
それを伝えていないのに、僕だけが聞くのは違うと思った。
マヒアに近付くにつれ、視界に移りこむエレノアの神殿。
それは色とりどりの果実が生った木の上に聳え立っていた。