奇跡事【完結】


どうやら、エレノアの神殿には魔力が弱い人間と、呪いをかけられた人間は入れない様になっているらしい。
呪いをかけられた人物はその結界に反発してしまうみたいだ。

磁石みたく、弾かれてしまう。


だから、エレノアが神殿にずっといたらいつまで経っても、サーティスはエレノアを殺せない。



「それをわかってるから、エレノアはあの神殿を出ないんだよ。
魔力が強くて、あの神殿に入れる人間なんてのはそうそういない。
僕は戦いたくなんてないしね」



例え、双子が生まれて強い魔力を持ってしても、エレノアを殺そうと思うきっかけがないと殺せない。
そこに辿り着くことが出来ないのか。

ましてや、ここで暮らしてる人々はエレノアの恵みとして崇めているんだ。


……殺そうとなんて出来るわけない。



「エレノアは黒いの。そして、白くもあるの。
悪い事を悪い事と、認識していないんだよ」

「……前にも言ってたね」

「うん。彼女の心の奥底は純粋なんだ。欲求に素直なんだよ。
だから、殺したいと思えば殺せばいい。死にたければ死ねばいい。
怒ればいい。泣けばいい。もがけばいい。
苦しみから解放されたいなら、殺してあげよう。
悲しみから解放されたいなら、殺してあげよう。
……愛したいなら愛せばいいってね」

「……」

「それを悪いって思わないんだよ。
その黒に呑み込まれそうになるから、僕は一緒にいたくない」

「そのエレノアとどうして昔は一緒にいたの?」

「!」
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