奇跡事【完結】
そう、声が突然降ってきて僕達の動きが止まった。
この、酷く冷たい声は。
……この、声は。
「サーティス」
闇夜にその甲冑が浮かび上がる。
月に照らされたサーティスの顔。鋭く、冷たい双眸で僕達を視界に捉えた。
「パチフィスタ、どういう、事」
そう問えば。
ふわりと体を浮かばせたパチフィスタは、その顔に笑みを乗せるとゆっくりと口を開く。
「面白そうでしょ?」
「……何が」
「愛する者が命を奪われて、そして覚醒していくサマなんてさ」
「……愛する、者」
ニヤっと笑ったパチフィスタに、僕はぽつりと呟き、ハッとする。
サーティスはサーシャを狙っているんだ。
すぐに僕はサーシャの元へと走り寄る。
「サーシャ!」
ぐいっと腕を引き、走ろうとするが目の前にすうっと姿を現したのはサーティスだ。
ダメだ。走ってなんか逃げられない。
どこにいたって、走って逃げられるわけない。
サーティスは一瞬で移動する事が出来るんだ。