奇跡事【完結】
「ふ、俺が憎いか?」
「……」
「無力な自分を恨むんだな」
そして、サーティスは剣を振りかざす。
その時。
「サーティス!!やめて!」
サーシャが僕の前に出ると、そう叫んだ。
ピタリとサーティスの動きが止まった。
サーティスはゆるりとサーシャに視線を移した。
だけど、キョウへの警戒も怠らずに。
剣先はキョウを向いている。
「……キョウは大事な、人だから」
「……」
「だから、やめて」
「お前は」
サーティスがぽつりと呟いた。
無表情なその顔。
感情なんて持ち合わせていないんじゃないかって思えるほど。
涙をぼろぼろと流すサーシャに、一瞬だけサーティスに隙が生まれた。
それを見逃さなかったキョウがサーティスに掴みかかったけど、サーティスの方が上手だ。
その剣がキョウの体に傷を作った。
脇腹を掠めた刃は血で濡れていて、キョウは倒れ込む。